宮田重雄さしゑ展


原田治さん主催のパレットクラブにて祖父の挿絵展を開催してくださることになりました。
昭和29年4月から読売新聞連載の獅子文六の小説「青春怪談」の挿絵原画展です。

私は中高生の頃Osamu Goodsの大ファンで、ノートや文具、お弁当箱など愛用していました。ある日出版社から、原田治氏が御著書「ぼくの美術帳」に祖父のことを書いてくださったことで連絡を頂いたときはびっくり仰天でした。その後、祖父の回顧展の際にご本人とも知遇を得、貴重な北園克衛の詩集の初版を貸して頂き感動しました。

獅子文六先生は祖父の慶應の先輩でもあり、とても親しくしていた。毎夏、箱根の「松坂屋旅館」に文六先生ご一家と行っていました。一人息子さんのアッちゃんは私より少しお兄さんで、よく遊んで頂きました。遊戯室のピンボールで2人で遊んで、大人達から調達した10円玉を使い果たした後、「じゃあ、アッちゃんのパパからもらってくるよ」と文六先生のお部屋に行くと、先生は一人藤の椅子に座っておられた。おねだりをして、先生はやさしく10円玉をくださいましたが、そのとき考え事か小説の構想を練っておられたのか厳しい雰囲気が部屋に張っており、子供ながらにまずかったかな、というような気持ちになったのを今でも覚えている。
文六先生が亡くなられた電話が来たときは、今私が座っている吉祥寺の家の座敷のここで、電話を切った祖父が大声で「アッちゃんのパパが亡くなったんだよ!」と呆然と立ち尽くしていたのがはっきり目に浮かぶ。祖父にとっては大打撃であった。その後1年半もしないうちに祖父も亡くなった。祖母や母が人に「文六さんが亡くなってガックリきて気力がなくなっちゃったのよ」と言っていた。それから何十年もたった今、こうして展覧会をして頂き、2人ともあの世で大喜びしているだろう。

うれしとてすぐ出る涙梅日和  重亭

展覧会にあわせて日本に来たら、すっかり春めいて庭の梅に鶯。

宮田重雄さしゑ展』        
2月20日(金)〜 3月1日(日)まで、無休。  午後1時〜7時まで。 入場無料。
場所・パレットクラブ 東京都中央区築地4-11-10   
詳細は原田さんのブログ http://d.hatena.ne.jp/osamuharada/20090213