www.newsweekjapan.jp

[ロンドン発]先進7カ国首脳会議(G7サミット)が6月11~13日に開かれ、G7、欧州連合EU)、韓国、オーストラリア、南アフリカの首脳、政府代表をはじめ、世界中のメディア、警備に当たる警察官6500人が結集した英南西部コーンウォール新型コロナウイルスの新規感染者が激増している。ほとんどがデルタ(インド変異)株とみられている。

7月23日に開幕する東京五輪パラリンピックは海外からの観光客はシャットアウトして行われるものの、世界中から選手や関係者ら10万人近くが来日する。すでにウガンダ代表選手団9人のうち1人の陽性が判明しており、五輪・パラ開催によって再生産数(R)が最大で7とされるデルタ株が蔓延することが懸念される。

地元メディアのコーンウォール・ライブによると、6月13日までの1週間の新規感染者はG7会場のセント・アイヴス&ハルスタウンで人口10万人に換算すると733.2(その前の1週間に比べて2450%増)、タウェッドナック、ルラント&カービス・ベイが同294.9(800%増)。国際メディアセンターが設置されたファルマス・イーストが同600(2000%増)。

コーンウォール&シリー諸島全体では同81.7(815.7%増)、イギリス全体の平均では同77.4(33.3%増)となった。

英政府が公開している新規感染者マップで確認すると(1)セント・アイヴス&ハルスタウン(2)タウェッドナック、ルラント&カービス・ベイ(3)ファルマス・イーストファルマス・ノース――の1週間ごとの新規感染者の小計は下の表のようになる。( )内は人口10万人に換算した時の指標だ。

kumura20210622172701.png

G7会場の1週間の新規感染者数をグラフで表すと感染の広がりは6月15日ですでにピークアウトしていることがうかがえる。

kumura20210622172702.jpg

新規感染者マップを時系列で見ても6月2日時点では感染がほとんど広がっていなかったのに、9日、16日と大量の警察官が警備に当たったG7サミット会場周辺だけでなく、国際メディアセンターが設けられたファルマス・イーストでもG7を境に感染が急激に広がったことが一目瞭然だ。

(*コーンウォールの友人を訪ねる予定だったが、延期か、、、)

時系列で見た新規感染者マップ

〈6月2日までの1週間〉3人未満は白くなっている。

kumura20210622172703.png

〈6月9日までの1週間〉G7会場となったセント・アイヴス&ハルスタウン、タウェッドナック、ルラント&カービス・ベイ、国際メディアセンターが設置されたファルマス、そして警備のためチェックポイントが設けられたニューキーで感染が広がり始める。

kumura20210622172704.png

〈6月16日までの1週間〉ボリス・ジョンソン英首相にゲスト国として招かれていたインドはデルタ株が流行しているため、オンラインでの参加となった。新規感染者マップを見ると、カービス・ベイ、ファルマス、ニューキーでクラスターが発生していることが分かる。いずれもイギリスの中でも最悪と言える感染状況(紫色)だ。

kumura20210622172705.png

こうした時に関係者が責任逃れに走るのは世の常だ。

「G7がデルタ株のスプレッダーイベントになった」という批判に対し、コーンウォールの地方議会は「コロナの感染拡大とG7サミットの開催が関係しているという証拠はない。コーンウォール西部ペンリンにある大学のキャンパスから感染は始まった」と説明している。しかし新規感染者マップを時系列で見るとG7との関連性を雄弁に物語っている。

コーンウォールにある介護施設では複数の感染者が出たものの、入居者の100%、スタッフの94%がワクチンの2回接種を終えていたため、いずれも無症状だった。やはりワクチンの2回接種が文字通り、生死を分けたと言えそうだ。

東京五輪の観客数は最大1万人

日本メディアによると、東京五輪・パラの大会組織委員会、東京都、政府、国際オリンピック委員会IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の5者は21日、五輪会場の観客数上限を定員の50%以内で最大1万人とすることを決めた。五輪開会式の入場者も2万人より少なくなる。

プロ野球など大規模イベントの制限に準じた決定だ。緊急事態宣言などが出された場合、無観客も含めて対応する。これで448万枚販売したチケットは272万枚に減り、900億円のチケット収入は半分以下になる見通しだ。パブリックビューイングの会場も中止や規模縮小を検討する。

選手は五輪・パラで約1万5千人選手団のスタッフやIOC関係者、メディアが7万9千人前後とみられる選手村は最大1万8千人が滞在できる。インドなどの選手については出国前の検査や入国後の移動・接触制限を厳格化する方針だ。

(*ということは、選手しか選手村には滞在できない=残りの8万人弱は普通にホテル?!)

感染への懸念から大会ボランティア約8万人のうち約1万人が辞退。ワクチンについては日本選手団のほか、選手と頻繁に接触するボランティア、契約業者、組織委職員、取材許可証を取得した国内の報道関係者、日本在住の海外メディアら国内の大会関係者向けに約4万人(8万回)分が確保されている。

UEFA欧州選手権(ユーロ2020、コロナ危機で1年延期)がグラスゴーやロンドンなど欧州10カ国11都市で分散開催されている。0-0で引き分けた6月18日のイングランドスコットランド戦ではスコットランドから大挙してサポーターがロンドンに押しかけ、試合後も夜通し大騒ぎした。

kumura20210622172706.png

ユーロ2020は間違いなくデルタ株のスプレッダーイベントになるだろう。しかしワクチン接種が進む欧州はいつまでも穴の中に閉じこもっているつもりはないようだ。入場者の制限は開催国や地域に任されており、日本より接種が進んでいるのに東京五輪・パラより制限を厳しくている国もある。

東京五輪・パラを開催すれば人の移動・接触の増加は避けられず、感染拡大は必至。デルタ株にも「ファクターX」が通じるかどうかは、もはや神頼みというほかない。とにかく高齢者や介護施設の入所者・職員、基礎疾患のある人などハイリスクグループを最優先にワクチン2回接種で入院・重症化予防を急ぐしかない。これはまさに命懸けのミッションだ。

以上