史上最高のロンドン・オリンピック開幕式 UKミュージック&カルチャーの祭典

ロンドンオリンピックが開幕した。
開催一週間前のロンドンに行った時はいつもより観光客も多いようなかんじで、ロンドン中にオリンピックのサインがあふれて、ロンドンオリンピック近し!の感あり。
オリンピックメイン会場近くに住む友人は、娘が開会式に参加するので今日もリハに行ってるとか、自分の勤め先の劇場が日本チームのマルチサポートハウスになったので、インテリアからキッチンまでジャパニーズ仕様で日本食コーナーもできたし、そのための設備投資もいろいろしてくれて(トイレもウォッシュレットに)で予算カットの劇場としてもありがたいし、期間中はシンプルモダンで洗練されたジャパニーズデザインの素敵な職場になって、彼女の”クールでエキサイティング〜”な毎日のエピソードきいて、なんだかロンドナーにはオリンピックも身近なんだなあ、と感心したのだった。と、同時に日本国のオリンピックにかける予算と熱意にも改めて驚くのだった。

一方、シュロップシャーあたりではスーパーでチームGBグッヅを売ってる程度で、町全体がオリンピックムードでは全然ない。最近リバプールマンチェスターに行って同様に感じた。ワールドカップやEUROチャンピオンシップのときは町も店も家や車もイングランドの旗であふれ、子供も大人も代表チームのユニフォームを着た人がわんさか繰り出して、すんごく盛り上がるのである。
まあそれもスコットランドウエールズアイルランドの人達からみたら「イングランドだけ盛り上がってこっちは関係ない」と思ってるかもしれないが。
やっぱりフットボールが国民的スポーツだとすれば、オリンピックの興味はそんなでもないんだろうし、盛り上げてるのはメディだけ、盛り上がってるのはロンドンとその周辺と一部のスポーツ好きだけ。おまけに、開催直前にセキュリティー会社の不備が明るみに出て軍隊や警官が駆り出されていい迷惑とか、空港のイミグレーションコントロールでストをするとか、北朝鮮の試合に韓国の国旗で紹介しちゃうとか、ドジ続きでさい先良くなかった。
わたしもロンドン周辺の混雑とカオスを考えると、期間中は何があっても絶対ロンドン周辺には足を踏み入れないようにと心しているのである。
日本の友人が日本サッカーチームの全試合を応援に来るのでチケットを頼まれたりして、コベントリーの試合なら近いから一緒に行ってもいいっかと、一試合だけ物見遊山で行ってみる予定である。その後はポーランドのロックフェスに行ってオリンピックのイングランドから脱出。
と言う訳で、スポーツに興味もなく、オリンピックに盛り上がってもいなかったのだが、ダニー・ボイル演出というのと、風船No4のセクションだからよく見ておいてね!と言われた友人の子供が出るので開会式は見たのである。そして、その英国文化の祭典のような開会式にはびっくりたまげて史上最高の開会式だと興奮と感動でした。
さすが、テレビ番組製作から映画監督になったダニー・ボイルですから、英国とその歴史と文化、あるいは国民性をTV、映画、音楽など大衆文化をメディアにして、知的でユーモラスでクールで高尚でポップで混沌として美しく描き出し、これぞブリティッシュネス、という一大絵巻。アッブソリュートリーファビュラス!
特に音楽面では、あのトレインスポッティングの監督、おまけにアンダーワールドの2人もセレモニーの選曲でコラボしてるそうだから、も〜これが我々世代としては嬉しい曲の連続UKミュージックのオンパレード。
オープニングの映像でも、田舎の河辺に遊ぶ子らのショットから、カメラが進むと「楽しい川辺」(ケネス・グレアム作)のモグラさん達の小舟がチラッと写り、ロンドンに近づくと、クラッシュのロンドンコーリング、バタシー上空にはピンクフロイドのピンクの豚の風船がうかび、ピストルズのゴッドセイヴザクイーンに、テームズ上空からの全体ショットでイーストエンダーズのイントロ(BBCの長寿連ドラでおなじみのショットと音)で、会場のライブ映像に切り替わり、あたかも視聴者のわたくしは家の裏のセヴァーン川辺から、オリンピック会場へ一緒に運ばれて行くような臨場感であります。そのように英国津々浦々の皆様が感じた事でありましょう。

大きく分けて3部構成のセレモニーでは、1部ではTest Deptを彷彿とするインダストリアルなドラミング、2部はマイク・オールドフィールドのライブでエクソシストのテーマ曲になったTubular Bells。3部はArctic Monkeysのライブで始まった。
意外!古くさいエルトンとか、フツーにポップなバンドでなく、インディーにArctic MonkeysがI Bet You Look Good On The Dancefloorをがなりたてちゃって、つづいてビートルズのカヴァーでCome Together、スゴく良かった〜 
ライブの後は、O.M.D.のエノラゲイでウッヒョ〜と昔のダンスフロアの青春を彷彿としてると、その後はThe Jam, Stones, Beatles, Zeppelin, Specials, Bowie, Clapton, Queen, New Order, Pistols, Eurythmics, Frankie Goes to Hollywood, Muse……ロックでダンスダンスダンス。トレインスポッティングで使われたUnderworldのBorn Slippyも当然、プロディジーのファイアースターターまで映像付きでかかったからな。
蛍光カラーの衣装とメイクで踊り回る若者達。今回の開会式の出演者1万人だそうで、メインは皆ボランティアの普通の人。ああ、私も入りたかったあのなかに。
それにしても、今回の選曲にはいってしかるべきで入ってなかったのが、The Smiths, Stone Roses, Verve, Oasis, Kasabianだ。BlurHappy Mondaysは入ってたのに。(ちょっと不満)
でもって、3部の最後はライブでDizzee RascalのBonkersで大騒ぎ。
Bonkersとはmad、という意味でスラングだけども、言葉としては古い英語だそう。
ジャンルでいうとgrime musicだけど、ヘヴィーなんだがどこか狸囃子的なとぼけた音感もあり、まさにbonkersな感じで、どっかずっこけで楽しく踊れてクールなホントに馬鹿な曲です。

選手入場も全てすみ、開会式の最後の最後のライブは当然というべきかサー・ポール・マッカートニーだ。
ちょっとお年で、声がイマイチ迫力にかけた。
その前までの音の流れを考えると、フレディーが生きてたらQueenWe Will Rock YouWe are the Champions、あるいはなんとかD.ボウイを駆り出してHerosあたりでばっちり決まるのになあ。
いかにもだけど、U2ってのも、あ、彼らはダブリンでGBじゃなかったか。
あるいは今年スペシャル再結成したStone RosesでFool's GoldとI wanna be adoredもこの機会にばっちりな曲で、イアンブラウンとベズのダンスとか、、、、超いいけど、それはもうあまりに分けわからな過ぎでダメだな。Stone Rosesは今月V-Fesに行ってきますから、そのときで。
Hey Judeをみんなで合唱、ナ〜ナ〜ナ〜ナナナ〜ナ〜♪でこの一大イベントは幕。世界のみんなが合唱できるのはやっぱりビートルズをおいてないでしょうね。
やっぱりビートルズは偉大だ。

音楽だけでなく、全てが素晴らしかった。機会があったら続きを書こう。
それにしても、世界中が見ている国家的イベントでBonkers(キチガイ、ど阿呆)ってな曲をライブでデカデカとフィーチャーしちゃうグレートブリテン、君主エリザベス2世がジェームス・ボンドと共演してパラシュート降下するグレートブリテンを愛す、心から愛す!
UKミュージック万歳!女王陛下万歳!英国万歳!
と、まんまとロンドンオリンピックのお祭り気分にまんまとのせられてしまったわけである。